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診療科目
心臓血管外科

心臓の手術

ペースメーカー手術

不整脈とペースメーカー

 脈が遅くなる不整脈では、一時的に脳への血液が不足し、めまい、生あくび、ふらつき、失神などの症状が出現します。このよう心臓のリズム(心拍数、脈拍数)がゆっくりになってしまう不整脈に対して、ペースメーカが用いられます。専門的な病名でいえば、完全房室(かんぜんぼうしつ)ブロックや洞不全症候群(とうふぜんしょうこうぐん)といわれている病気です。これらの不整脈も、通常は正常な脈を示し、発作時のみ脈のみだれを生じることがあり、1-2回の短時間の心電図検査にて発見されないことも多々あります。発作時の心電図、24時間心電図、運動負荷心電図等の検査で、不整脈を正しく診断する必要があります。
 これらの病気の多くは単独で、心臓の筋肉や心臓の弁には異常がないのにリズムだけがきわめてゆっくりしている(脈が少ない)、という症状で現れます。心臓ペースメーカーは脈が少なくなった時に、電気的刺激を心臓に与え、心臓の鼓動を維持する機械です。

もっとくわしく

 心臓は、人間の活動に必要な酸素や栄養を運搬するのは血液を全身に送り出すポンプの役割をしています。正常な成人では1分間に約70?80回心臓が収縮と拡張を繰り返すことにより、血液が全身に送り出されます。この心臓の動きを制御し、指令を出しているのが、右心房上部にある洞結節です。洞結節から規則正しく発生した心臓を収縮させるための刺激は、いくつかの経路を通り房室結節まで伝えられます。房室結節に伝わった刺激は、刺激伝導系という経路を通り心筋に伝達され、心筋の収縮は心室の収縮という機能的な動きとなり、心室は血液をポンプとして送り出します。通常は心房と心室は一定の間隔をおいて順番に収縮し、効率的に血液を全身に送り出します。
 ペースメーカー植込みの必要となる疾患には、完全房室ブロックや洞機能不全症候群などがあります。
完全房室ブロック
 刺激伝導系が心房と心室の間で完全に切れている状態をいいます。この不整脈になるると、心臓の収縮は一分間に約30?40回/分位に低下して、心臓には大きな負担となり、心不全になったり、めまいや失神をおこす原因にもなります。まれには、脳への血流が一時的に低下し、めまいや失神の原因にもなります。
洞機能不全症候群
 心臓の収縮の司令塔である洞結節が正常に刺激を出すことができなくなる状態をいいます。この不整脈になると心臓の脈拍が遅くなったり、数秒の間心臓が停止したりすることがあり、脳への血流が低下し、めまいや失神をおこす原因にもなります。
心房細動(心房が小刻みに震える不整脈)
 脈拍数が減少し、脳への血流が低下し、めまいや失神をおこす原因にもなることがあります。

これらの脈拍数が少なくなる不整脈に対して、電気的に刺激を与えて心臓の拍動数(脈拍数)を補うのが心臓ペースメーカーです。

ペースメーカーの植込み方法

 心臓ペースメーカーは、刺激を作り出すペースメーカー本体と、刺激を伝えるカテーテル電極(ペースメーカーリード)の2つの部分から成り立っています。
 ペースメーカー本体には、内部に電池と電気回路が内蔵されており、その上部にはペースメーカーリードをつなぐための部分があります。ペースメーカー本体は500円玉2枚より少し大きめで重さは20?30gです。ペースメーカーリードは、先端部分に電極があり、その部分が心臓の筋肉に接して、電気刺激を伝えます。これらの本体とペースメーカーリードは、手術により体内に完全に植込まれます。通常、患者さんの年齢や生活様式、環境などに合わせて、植込み方法が決められます。
 最もよく用いられるのは、鎖骨の下を通る静脈にカテーテル電極を挿入して、心臓に到達させる方法です。ペースメーカ本体は左右どちらかの胸部(鎖骨の下の皮下)に植込まれます。
 もう一つの植込み方法は、心臓の表面に心筋電極を直接固定します。この場合、ペースメーカ本体は通常、腹部に植込まれます。小児の患者さんや心臓手術を受けた後の患者さんなどの特殊な患者さんに対してペースメーカを植込む必要のある場合にこの方法で行われます。

ペースメーカーの植込み術の入院経過

 ペースメーカー植え込み手術は、外来などの検査にてペースメーカーが必要であると診断された場合、通常は7日から10日の入院で行われます。手術は手術室又は心臓カテーテル検査室にて行われます。麻酔は局所麻酔で行われ、手術を担当する医師、技師、看護師と話しながら行われます。不整脈の種類によっては、ペースメーカー植え込みに際して、心臓カテーテルを用い不整脈の病態を調べる電気生理学的検査が行われます。
 通常、ペースメーカーは左鎖骨下に植え込まれます。まず局所麻酔によりペースメーカーリードを鎖骨下静脈から心室、心房内に挿入、留置します。このリードが確実に心臓に刺激を伝えれることを十分に検査した後、ペースメーカー本体に接続し、リード、本体は皮下脂肪と筋肉の間に埋めこまれます。この後、本体がぶらぶらしないように固定され、皮下、皮膚が縫合されて、手術は終わります。
 ペースメーカー植え込み手術後約3日間は、急激な腕の動きは制限されます。手術後7日に、レントゲン検査にてペースメーカーリードの先端部の確認、ペースメーカー本体の機能、リード機能の検査が行われます。これは、身体の表面に専用の検査用機械をあてコンピューターにてチェックします。植え込み創部は通常7日で入浴可能にまで治ります。ここで合格が出ると退院が可能となります。手術後1カ月は、自分で検脈することに慣れましょう。何か異常があれば、担当医まで連絡ください。その後は3ヶ月毎にペースメーカーの専門外来にて、ペースメーカーの状態を検査していきます。

ペースメーカーの植込み患者さんの日常生活での注意

 高電圧設備、発電設備、放送所アンテナ、レーダーアンテナ、大型モーター、誘導溶解炉など強力な磁場の発生する場所、自動車のエンジンルームをのぞきこんで作業など、強力な磁場の発生する場所へ不用意に近づかないようにしましょう。
 電磁調理器(電子レンジ)・IH炊飯器等、不良電気器具、アーク溶接器、スポット溶接器、低周波治療器、高周波治療器、電気のこぎり・ドリル・研磨機など火花を散らすモーター、高出力トランシーバー、盗難防止器、金属探知器なども、ペースメーカーに異常をきたす可能性があるとされています。

携帯電話使用の注意

 携帯電話の使用について、現在の携帯電話は22cm以上ペースメーカー本体から離れると誤作動を起こさないとされています。ペースメーカー植えこまれた患者さんも、植え込まれた反対側の耳で携帯電話を聞く、胸ポケットに携帯電話を入れないなどの最低限のルールを守ることにより使用可能です。電車や人ごみの中などで近くの人が携帯電話で話している場合、それはその人のモラル、マナーの問題であり、22cm以上離れるとペースメーカの機能には問題ありません。静かにマナーの悪い人から離れれば、それで十分です。
 家庭で電気製品を使う場合、直接からだに電気を通すものや、外に強い電磁波を出すものの使用は避けて下さい。例えば、電磁調理器や電極を貼りつけるタイプの治療器、IH炊飯器、大型テレビのブラウン管等に対しては、抱きしめるくらい近くに寄らない方が良いです。
 又、アースを取るように指示されている器具は必ずこれを守って下さい。  電気毛布も一般には安全に使用できます。電気毛布をすることで不安で寝られないようであれば、念のために、前もって温めておき、寝る前にコンセントを抜いた方がより安全で快眠が得られることと思います。
 盗難防止装置、空港の金属探知機など、装置の中央に数分間とどまることは危険です。通り過ぎるだけなら支障ありません。空港では、ペースメーカー手帳を提示し、装置を通らないで検査を受けることが可能です。最近お店の入り口に盗難防止装置を設置している所が増えてきています。装置の傍に、不用意に近づかない、装置通過時にも不用意に立ち止まらない、などに中止すれば問題ないものと考えられています。
 近年の高度電化生活社会においては、日常いたるところに電気製品、電磁製品が氾濫しております。ペースメーカ植え込みを受けた患者さんは、日ごろから自己検脈をする習慣をつけて、自分でペースメーカーのチェックをするのようにすれば、安全な電化生活を送ることも可能です。もし、異常を感じたら、担当医に相談ください。