|
下肢静脈瘤について
|
1.はじめに
脚のむこうずねやふくらはぎの静脈がモコモコと膨らむ病気です。ほっておくと、脚がむくんだり、疲れやすくなったり、できた傷が治りにくくなったりします。軽症の人は弾力ストッキングや休む時に足を上げることで症状は改善します。中症以上の人は、手術などの治療が必要です。
☆一度専門医にご相談ください。

2.下肢静脈瘤とは
脚の表面を走る静脈が、太く浮き出ている、もしくは瘤(こぶ)のように膨らんだ状態をいいます。多くは太くウネウネと曲がりくねっており、その太さはまちまちです。下肢静脈瘤は、足の表面を走る静脈が拡張・蛇行する病気です。
身体の血液循環は主に動脈流と静脈流により成り立っています。動脈の血は心臓というポンプの力によって、頭の先から手足の先まで送り出されます、静脈の血は筋肉の収縮などにより、静脈内にある一方弁によってゆっくりと心臓へ戻ってきます。特に立っている時の足の静脈は重力に逆らって足の先から心臓に向かって血液を送り返さなければならなく、血液が逆流しないように止めているのが静脈弁です。この静脈の弁が壊れて、機能しなくなった結果、静脈瘤としてあらわれます。
3.下肢静脈瘤の原因
下肢静脈瘤の原因は大伏在静脈、小伏在静脈の静脈弁の機能不全により生じます、静脈弁の壊れる原因は、多くは不明です。しかし、立ち仕事の人、妊娠を経験した女性に静脈瘤は多く、長い立ち仕事や、妊娠中のホルモンの影響や胎児が大きくなり静脈を押さえることにより、足からの静脈還流が停滞し、静脈が拡張し、その結果弁の機能が破綻し、静脈瘤となると考えられています。
4.下肢静脈瘤の病態
通常に見られる下肢静脈瘤は、一次性下肢静脈瘤と言われる静脈瘤です。先ほどお話したように、大伏在静脈、小伏在静脈の静脈弁の機能不全により生じます。足の静脈には皮膚表面を走る大伏在静脈、小伏在静脈静脈とその枝(表在静脈)と足の栄養する動脈と並んで筋肉内を走っている深部静脈とがあります。通常脚の静脈はこの弁の機能により脚の筋肉が収縮することにより、静脈の血液は心臓に帰って行きます。しかし下肢静脈瘤の患者さんでは、この深部静脈の弁機能は正常です。深部静脈から返ってくる酸素を使われた血液が、弁の壊れた大伏在静脈、小伏在静脈に逆流して行き、深部静脈との連絡する静脈(交通枝)を通り、ぐるぐる回りの状態に陥ることがあります。この酸素を使い終わった血液がぐるぐる回りすることにより、足のむくみ、疲れなどが起こっているものと考えられ、その他の症状の原因とも考えられています。
図1:正常な人の静脈と弁
図2:静脈瘤になった人の弁の状態
5.静脈瘤の分類
1)伏在静脈瘤 大小伏在静脈本幹およびその主要分枝の静脈瘤で最も太い瘤を形成する。足の付け根や膝の裏から静脈に逆流が生じている。治療を希望する殆どの人がこのタイプである。 2)側枝静脈瘤
伏在静脈より末梢の静脈瘤で孤立性のこともありやや細い。 3)網目状静脈瘤 細い皮下静脈が網目状に拡張する。径2,3mmである。 4)クモの巣状静脈瘤 径1mm以内の皮膚内静脈瘤である。
6.二次性静脈瘤
二つ目は二次性静脈瘤と呼ばれ、静脈の本幹が血の塊(血栓)でつまってしまった(深部静脈血栓症)のために、回り道として表在静脈が膨らんできて静脈瘤が発生することがあります。この二次性静脈瘤は前記したような治療は行いません。 なぜなら深部静脈という大事な本幹がつまったために必要に迫られて体表の静脈を流れて血液が返っているわけですから、この二次性静脈瘤を取ってしまうと、脚から心臓へ血液の戻る道が全くなくなってしまうわけです。しかし、この二次性静脈瘤を引き起こす深部静脈血栓症が原因でおこる肺梗塞はエコノミークラス症候群といわれ、致命的な重篤な疾患のひとつである点で注意が必要で、血管外科医や専門的医の受診が必要です。
7.下肢静脈瘤の状態
1.外見上美容上の問題
浮き出た血管が気持ちが悪い、カッコ悪くてスカートがはけないなどの外見上美容上の問題を訴えます。
2.足が重い、むくむ、だるい、つる
静脈弁が壊れたために、脚の静脈にうっ血が起こります。このうっ血(血液がよどんでたまること)により、これらの症状が作られます。
3.痛む、かゆい
血液のうっ滞が進み、だるさ・重さがさらに進むと痛みとして感じられることがあります。血管の拡張による痛み、静脈炎・血栓の発生に伴う痛み、かゆみなどもしばし見られます。
4.皮膚炎、湿疹
足首や静脈瘤の周囲に皮膚炎が起きやすく、うっ血により皮膚皮下組織へ低栄養状態が進み、皮下組織が繊維性変化を起こし硬くなります。
5.皮膚の色素沈着、皮膚硬結、潰瘍
皮膚の色素沈着、皮膚硬結、潰瘍などができると、皮膚の血液循環が悪いために、極めて治りにくく、なかなかもとの皮膚の状態にもどすことは難しく、また長時間かかります。静脈瘤を放置したままでは、これらの症状は極めて治りにくく、徐々に増大していきます。 一方で下肢静脈瘤の進行は比較的遅く、まったく自覚症状がない、という患者さんもいらっしゃいます。しかし、下肢静脈瘤を放置し静脈血のうっ滞が長い間続くと、下肢静脈瘤に伴った合併症がおこあります。下肢静脈瘤について、一度早めに専門医までご相談ください。
8.下肢静脈瘤の治療
T.圧迫療法(弾性ストッキング)
伸縮性つよい弾性ストッキングをはき、外側から拡張した血管を圧迫し、下腿に血液がたまることを防ぎます。弾性ストッキングには、一般用と医療用のものがあり、ストッキング・パンストタイプや片足用・ハイソックスなどの種類があり、弾性の強さも弱圧・中圧・強圧とわかれています。静脈瘤の症状、程度により、選択する必要があります。医療用の弾性ストッキングは、一時的に症状を軽くするには効果はありますが、本質的に静脈瘤が治るわけではないことは十分理解しておいてください。 弾性ストッキングは、手術後早期、硬化療法時の治療後に補助療法(圧迫療法)としてしばらくの間はその使用が必要となります。
U.侵襲的治療
下肢静脈瘤の根本的治療方法として弁不全をおこしている静脈を抜き取ってしまう「ストリッピング手術」が主流でした。これに対して、ダメになった血管を抜き取る手術法で、この手術は半身麻酔または全身麻酔で行われ、約1〜2週間が必要でした。最近、静脈瘤の血管を引き抜くのではなく、血管をそのままにしておいて血管自体を薬を用いて詰めてしまおうという治療がおこなわれるようになってきました。これが静脈瘤の硬化療法です。硬化療法は手軽な優れた治療法ですが、再発することがあります。高位結紮術や交通枝結紮術と組みまわせ、治療効果を一見簡単そうな治療に思えますが,とても技術と熟練を要し、技術差が反映されるため専門科での治療をすすめます。
1)硬化療法
下肢静脈瘤の根本的治療方法として弁不全をおこしている静脈を抜き取ってしまう「ストリッピング手術」が主流でした。これに対して、静脈の中に硬化剤を注射して、血管の内側の壁をくっつけたり、血管の内側を血栓で詰めてしまうことで、瘤化した静脈を退化させることができます。これは、手術のような傷を残しませんし、体への負担が少ないなど利点も多いのですが、大きい静脈瘤には余り有効ではない、再発率が高く、術者に熟練と技術を要するなどの欠点を有します。しかし、高位結紮術や交通枝結紮術を併用することで治療成績が良くなっています。細い静脈瘤にも適応があります。
2)レーザー治療
最近では、網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤などの細い血管の静脈瘤に対してレーザー治療の有効性も示されるようになってきました。治療の迅速性、非侵襲性から鑑みて、注目されている新しい治療法です。
3)手術療法1 ストリッピング
下肢静脈瘤の根本的治療方法として弁不全をおこしている静脈を抜き取ってしまう「ストリッピング手術」が主流でした。これに対して、ダメになった血管を抜き取る手術法で、この手術は半身麻酔または全身麻酔で行われ、約1〜2週間を必要とします。わずかな可能性ではありますが,血管を引き抜く際に神経を痛める神経障害がおきる場合があります。手術後半年位のうちには軽減します
4)手術療法2 高位結さつ術
弁不全のある静脈と深部の静脈の合流するところで縛ってしまう方法です。以前は血管縛るだけの方法が行われていましたが、再開通により再発が多くみられました。そこで、現在では血管を切り離すことによって再開通を防ぐ手技にかわりました。ストリッピング手術と異なり局所麻酔で行うことができます。2−3日に入院で行うことが可能です。
5)手術療法3 高位結さつ術+交通枝結さつ術+硬化療法
局所麻酔による高位結紮術を行い、下腿の静脈瘤に対して併用する事により、再発を防ぎ治療効果を著しく高めています。2−3日に入院で行うことが可能です。硬化療法のみの場合に比べて、治療効果、治療期間、再発率の点から優れています。硬化療法単独、結紮+硬化療法でも、治療後は硬化療法部の血管を包帯で圧迫処置を2〜3日行い、再発予防のための後療法として弾力ストッキングを1〜2か月くらい履いていただきます。硬化剤の注入量の関係から、一度にすべての血管を硬化させることは難しく、手術後外来通院を行いながら、残った末梢の静脈瘤に対しては、外来にて何度か硬化療法を追加行います。
6)その他の治療
最近では、壊れてしまった弁を作り直す弁形成術や血管内視鏡を使った手術も行われるようになりましたが、手術成績はまだ一定しておらず今後に期待がよせられます。