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冠動脈バイパス手術

バイパス治療の必要性

バイパス治療の必要性

 狭心症に対する治療は薬物療法が中心です。薬物療法が無効で、心筋梗塞の危険がある場合に専門の循環器内科医による風船付きのカテーテルを使った経皮的冠動脈形成術(PTCA)が行われます。近年、技術的な進歩は目覚ましく、狭窄部を削るDCA、ROTAや拡げるSTENT等が行われています。冠動脈バイパス術は、これらカテーテルによる治療法が不適切または不可能な場合に行います。バイパス治療の必要性につきましては、循環器内科医、心臓外科医と十分に協議説明を受けてください。


バイパス手術とは

バイパス手術とは

 冠動脈バイパス手術を考えるにあたり、バイパス道路の工事に例えて考えると理解できます。バイパス道路は市街地の旧道が交通渋滞の状態にあるときに、渋滞緩和の為に市街地を迂回して(市街地の旧道はそのままの状態で)目的地まで建設されます。市街地の交通渋滞の状態を起こしている狭い旧道が冠動脈の動脈硬化で狭くなっている病気の部位と考えてください。冠動脈バイパス手術は、冠動脈の狭い部分には手をつけず、身体の他の部分の血管を使って狭い血管の先にある正常な太さの冠動脈まで新しい血液の流れるバイパスを作製する手術です。


バイパスに用いる血管について

バイパスに用いる血管について

 冠動脈バイパスに用いるバイパス用血管(グラフト)としては、足の静脈(大伏在静脈)、胸の骨の裏にある左右の内胸動脈、胃のそばにある右胃大網動脈、左右前腕の撓骨動脈などが使われます。これらの血管はバイパスに使用するため採取しても、特に悪い影響は残しません。バイパスグラフトとしての耐久性に差があり、日本人では10年で内胸動脈は10%、大伏在静脈は30%程度、閉塞する確率があると報告されております。バイパスグラフや手術方法は専門の医師により、患者さんの病態、病状、冠動脈病変などにより選択されます。手術を受けられる方は、担当医にくわしくお尋ねください。

 


バイパス手術のトピックス

 冠動脈バイパス手術は、約30年の間、人工心肺装置を用いて、心臓を止め、冠動脈とバイパスの吻合(血管をつなぐ)が行われていました。1990年前後に南米の心臓外科医が、人工心肺を用いず、心臓止めずに、冠動脈バイパス手術を行い、優れた成績と医療費の削減の面から注目されるようになってきました。その後、心臓を止めずに冠動脈吻合を行うための器具が次々に開発され、現在は冠動脈バイパス手術の一手法として定着してきているのが現状です。心臓を止めることによって起こっていた合併症、人工心肺装置を使ったために起こってしまう合併症は、この方法を採用することにより減少します。当院心臓血管外科においても、通常の冠動脈バイパス手術においては心拍動下(心臓を止めず)に、バイパス手術を行っております。

 この方法については、未だ専門の心臓外科医の間においても議論の的でありますが、近い将来において、心臓を止めない冠動脈バイパス手術の優れた効果が証明されることと推測しております。


冠動脈バイパス術後の患者さんへ

 経皮的冠動脈形成術や冠動脈バイパス手術は、狭心症の発作に対しては優れた効果が示し、術前に自覚していた狭心症、胸痛、息切れは消失し、あたかも完全に病気が治ったと勘違いしてしまいます。

 バイパス手術では、あなたの動脈硬化に陥った冠動脈はそのまま残ります。また動脈硬化をおこす生活習慣は手術では治りません。手術後も動脈硬化が進まないように、生活、食事に注意する必要があります。手術後も、主治医と相談し、バイパスが閉塞しないよう、良い状態を保つようにしてください。また退院後や遠隔期に症状が再発した場合、再検討は必要ですが、カテーテルによる治療や再手術は可能です。定期的な通院、外来診察を受け、病状の進行に注意しましょう。


冠動脈バイパス手術とカテーテル治療の組み合わせ

 またバイパスよりカテーテルによる治療が適していると考えられる冠動脈病変に対しては、バイパス手術の前後でカテーテル治療を行う場合があります。カテーテル治療とバイパス治療の利点を組み合わせた総合的冠動脈治療により、より安全で、患者さんへ侵襲も少なく、治療効果の高い治療法を行うことが可能になることと考えられます。


急性心筋梗塞合併症に対する手術

 心筋梗塞は、その発症部位や大きさから様々な心臓の病気が引き起こし、時として外科的治療が必要になってくることもあります。

左室瘤心筋梗塞で壊死した左心室の壁がこぶの様に膨れ、心不全などの原因になる。
左室自由壁期破裂心筋梗塞で壊死した左室壁が破れる。
心室中隔穿孔左心室と右心室の壁(心室中隔)に心筋梗塞が波及し、弱い部位にて穴が開く。
左心室から右心室へ血が流れ出す。
虚血性僧帽弁閉鎖不全症心筋梗塞の壊死が僧帽弁を支える乳頭筋に波及し、乳頭筋が断裂または引き伸ばされたり、心筋梗塞により僧帽弁の弁輪郭が引き伸ばされるなどし、僧帽弁閉鎖不全症が引き起こされることがある。

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