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閉塞性動脈硬化症

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症とは?

 動脈硬化が原因で四肢(特に足)の血流障害をきたす疾患を閉塞性動脈硬化症といいます。動脈硬化とは血管にコレステロールなどがたまり血管が狭くなったり閉塞する病態で、高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙などといった危険因子を持つと起こりやすくなります。心臓に栄養を送る動脈(冠動脈)に動脈硬化が起きる冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)、脳に栄養を送る頸動脈や脳動脈に動脈硬化が起きる脳梗塞も基本的には同じ病態であり、閉塞性動脈硬化症を発症した患者の3割にはそれらを重複していると言われています。


閉塞性動脈硬化症の症状は?

閉塞性動脈硬化症の症状は?

 最も多い下肢の閉塞性動脈硬化症の症状は間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれ、数m歩くと患側の足がだるくなったり、痛くなり歩けなくなりますが、しばらく休むと改善するというものです。放置すると水虫や外傷などを契機に症状が増悪し、足の壊死を起こし下肢切断にいたるケースもあります。

 閉塞性動脈硬化症患者の予後は悪く、適切な治療を受けないと5年生存率は7割以下で、乳癌や大腸癌よりも悪いと言われています。そのほとんどの死因は足の壊死ではなく、合併する心筋梗塞や脳梗塞であり、単なる「足の血管の動脈硬化」ではなく、「足にまで動脈硬化が及んだ末期像」と考えられます。 閉塞性動脈硬化症のほとんどの患者は、循環器内科ではなく整形外科を受診することが多いと報告されており、発見が遅れる原因になります。整形外科や接骨院での治療を行っても間欠性跛行が改善せず、高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙・透析などの危険因子を有する場合は、循環器内科受診も考えることが必要です。

閉塞性動脈硬化症の診断

閉塞性動脈硬化症の診断

 診断には触診などの理学的所見に加えて、足と腕の血圧の比を測定するABI と呼ばれる簡便な検査があります。正常では、ABI は1以上(足の血圧の方が腕の血圧より高い)ですが、血液の流れが悪くなると、ABI は低下します。ABI が0.9以下の場合には、足に動脈硬化が起こっていると考えられます。ABI低下を認めた場合は、専門病院での精密検査になります。一般的には超音波検査、造影剤を使用したCT検査、MRI検査などで確定診断をつけます。

 


閉塞性動脈硬化症の治療

 閉塞性動脈硬化症の治療は、①危険因子の管理(高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙)、②運動療法、③薬物療法、④血行再建療法(カテーテル治療とバイパス手術)があります。

①危険因子の管理

動脈硬化症のガイドラインに準じて厳格な血圧管理(mmHg以下)、脂質管理(LDLコレステロール100以下)、血糖管理(HbA1c)目標の達成を目指します。特に禁煙は重要で、達成できない場合は禁煙外来などを受診します。

②運動療法

歩くことにより側副血行路(そくふくけっこうろ)が発達し血行が改善するため、足の症状が出るまでは、休みながらも繰り返し歩くように心がけます。

③薬物療法

症状を緩和させる血流改善薬(シロスタゾール、サルポグレラート、イコサペント酸エチル(EPA)など)と、死因に影響する脳梗塞・心筋梗塞を予防するための抗血小板薬(クロピドグレル、アスピリンなど)を用います。

④血行再建療法

循環器内科が行う血管内治療と血管外科が行うバイパス手術があります。症例によって、病気の部位によってそれぞれの治療が選択されます。

      1. 血管内治療

         風船の付いた細い管(バルーンカテーテル)を血管の中に入れて風船で拡張したり、ナイチノールという金属でできた形状記憶のコイル(ステント)を入れる治療が主流です。からだへの負担が少なく、短い入院期間で治療が可能です。バイパス手術よりも再発が高いという欠点がありましたが、再発しても容易に繰り返し治療ができること、近年の技術や道具の進歩で再発率が大きく減少したことで、当院ではカテーテル治療を中心に行っております。

      2. 血管バイパス手術

         足の静脈や人工血管を用いて、閉塞した血管の前後でバイパスをつなぐ手術です。再発は少ないですが、からだへの負担は大きく、入院期間が長くなります。
         当院では、血管外科チームとフットケアチームで毎週症例検討を行い、患者さんにとって最も適切な治療法を選択するように心がけています。


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