TOP >  診療科目 >  心臓血管外科 >  血管の病気 ~閉塞性動脈硬化症~

血管の病気 ~閉塞性動脈硬化症~

はじめに

「歩いていると足が痛くなって一休みするようになった」
「歩いているときに一休みする間隔が短くなってきた」
「坂道を登ると、すぐに足が痛くなる」
「足先が冷たくしびれるようになった」
「以前に比べ歩くスピードが遅くなった。みんなの歩くスピードについて行けない」

--こんな症状に、心当たりはありませんか?

 加齢による衰えと、見過ごしたりあきらめたりしてはいけません。動脈硬化の疾患「閉塞性動脈硬化症」の初期症状である可能性があります。

 閉塞性動脈硬化症は腹部大動脈および下肢動脈の動脈硬化のために血液の流れが悪くなり、慢性に足への血流障害を起こした病態を言います。足への血液が流れにくくなるために、特に足先の冷たい感じやしびれがおこり、歩行が困難になり、放置しておくと足先が壊死(えし=組織の一部が死んだ状態)を起こし、下肢切断に至ることもあります。

 また、全身の動脈硬化合併症として、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳梗塞などの脳血管障害をきたすこともあります。閉塞性動脈硬化症は進行性の病気であり、症状の進行はフォンテイン分類(I度~IV度)によって4段階に分けられています。


症状~フォンテイン分類

〈Ⅰ度〉冷感、しびれ

症状~フォンテイン分類〈Ⅰ度〉冷感、しびれ

足が冷たい、しびれる。

〈Ⅱ度〉間歇性跛行

症状~フォンテイン分類〈Ⅱ度〉間歇性跛行

一定距離の歩行によって筋肉痛が起こり、休息後再び歩行可能になる。

〈Ⅲ度〉安静時疼痛

いつも足先が痛い、足が痛くて歩けない、 夜中に足が痛くて眠れない。

〈Ⅳ度〉潰瘍・壊死

足の指が紫色や黒くなってきた。足先の傷が治らない。

閉塞性動脈硬化症に対する検査

◎診察

股、膝裏、足先の動脈の拍動を触知。ドップラー血流計による検査。

◎四肢血圧/脈波測定

両手、両足の血圧測定、動脈の脈波形の検査です。

◎CT・MRI検査

動脈硬化の程度、部位を大まかに調べることが可能です。

◎血管造影検査

実際に動脈に造影剤を注入し、血管病変の部位、程度を詳しく調べます。


閉塞性動脈硬化症に対する治療

薬物療法

▼血管拡張剤

 血管を広げることにより血流を増加させます。しかし、動脈硬化で硬く狭くなった血管はあまり広がらないため、効果も不十分です。

▼抗凝固療剤

 動脈硬化で狭くなった血管壁に血栓ができて、より血流が悪くなるのを予防します。

 動脈硬化になりやすいと考えられる基礎疾患である糖尿病、高脂血症、高コレステロール血症、高尿酸血症、高血圧症などの生活習慣病の治療が必要です。内科的治療は、血流改善の意味からは不十分であり、一般には軽症な患者さんや下記の血行再建後の患者さんに補助療法として行われます。

運動療法

 薬物療法と併せて運動療法を行うことが重要です。的確なリハビリによって閉塞したたままでも日常生活に差し支えないレベルまで運動可能となる事もあり、これによって手術を回避できる事もあります。 当院では入院のうえ、管理下のリハビリを積極的に取り組んでいます。

 また血管内治療や外科的治療の後も適切な運動をすることにより、より良好な状態が長く望めます。

カテーテルによる血行再建治療(経皮的血管形成術)

 早期であれば血管造影検査に引き続き、血管内にいれた特殊なバルーン(風船)により、動脈硬化で狭くなった血管を拡げる(経皮的血管形成術を行う)ことが可能です。病気の状態により、ステント(金網でできたパイプ)を留置することもあります。これらの治療により足先への血流が改善します。

外科的血行再建術

外科的血行再建術

 人工血管や自己静脈を用いたバイパス手術です。狭くなる前の動脈から、狭くなった後の動脈に人工血管や自己静脈で、別の血液へ流れる道を作ります。血管外科的技術や人工血管、薬剤などの進歩により、以前では明らかに下肢切断しか仕様がなかった患者さんでも、下肢温存の可能性が増えてきています。

 »もっと詳しく(リム・サルベージへ)

四肢切断術

 壊死に陥った部分は再生しないばかりか、体に悪影響を及ぼすこともあり、切断しなければなりません

 親にもらった足はたとえ指一つでも切り落とすのは、外科医でもあまりお勧めできません。病気が進行するまでに、早く専門医を受診することをお勧めします。もし、自分や周りの人がこの病気ではないかなと思われた方は、一度心臓血管外科の外来を受診ください。


↑ページのトップへ